終わりに

 ゲームでは表現できていない重要な社会制度も多い。公共財、財政政策や銀行制度、交換行動の際の関税、輸送コスト、独自通貨の影響、私有財産制度、独占の問題など、挙げればきりが無い。ただし、ルールを改良することで、これらの制度もゲームでも表現できるかもしれない。  本文中で述べたように、あくまで本書の目的はこれらを全てゲーム内に表現することではない。現実世界の全ての利害得失を全てゲーム内に表現しようとすれば、ゲームは現実世界そのものになってしまう。それではゲームが難解になりすぎてしまい、戦略が立てられない。そこで筆者は、利害得失を与える現象の中でも大きい順に表現していくことが重要であると考えた。  20世紀になるまで環境問題が大きく取り上げられなかった一番の理由は、人間の利害得失にあまり関わらなかったからである。しかし、成長の限界が次第に露になり、自然が人間に牙をむき始めたので、人類は環境問題のことも損得勘定に入れながら意思決定を行わざるを得なくなってきた。
 現在の経済理論は地球環境問題、失業問題、経済成長の問題、人口問題、経済的格差の問題、人間の合理性、技術革新、エコロジー的視点、これらの重たい問題を個別に議論する際には強力な理論であるが、これらを統一的に議論する際には非常に複雑な議論を強いられ、私のような素人には各論を理解するので精一杯である。それに対し、現実世界の環境や経済問題を一旦ゲームへと表現すると、これらの問題は得点という一つの価値尺度の比較の問題へと集約されてしまう。これはつまり、地球環境問題、失業問題、経済成長の問題、経済的格差の問題などの外部効果を全て内部化して考えたものに他ならない。これは失業者の心の痛みをお金に換算する、といったことをしていることに相当するので問題が無い訳ではない。しかし、失業の価値の大きさを測ることをいつまでも避けていると、いつまでたっても失業問題と環境問題を同時に議論できないことも事実である。したがって、本書で行ったように重要問題を全てゲーム内に得点化して表現することが賢明であると筆者は考えたのである。
 著者の本当の目論見は、まずは一旦現実世界をゲーム上で表現して、更にそのゲームを数式で解析しようというものである。本書はその目論見の前半部分だけであり、数式での解析は今後の課題である。  また、本書は「ミクロゲーム」の考察であったが、「マクロゲーム」というゲームを定式化することもできるので少しだけ紹介しておく。ミクロゲームのプレイヤーは主に個人を表現したものであったが、マクロゲームのプレイヤーは主に国の国会議員や大統領を表現したものである。マクロゲームの定式化はほとんどミクロゲームと同じなのだが、マクロプレイヤーは「トークン」という小さな人形を手元に保持しながらプレーする点が異なる。トークンの数は国の人口を表現しており、マクロプレイヤーはミクロゲームで定式化した行動に加えて、

行動8:人口調整行動(トークンの数を調整する行動)

を取ることができる。
行動8があるおかげで、マクロゲームではミクロゲームよりも幅広い戦略が可能となり、 環境問題に対してもより有効な戦略を考えることができる。しかし、細かな戦略考察は未完成であるので, これは著者の今後の課題とさせてもらいたい。

 参考文献

奥付

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Amazonでの紹介(ISBN-10: 4109100070 ,ISBN-13: 978-4109100076)
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