1-1ミクロゲームの定式化

 日常で行われている活動の一部は、ゲームとしてとらえることが可能である。身近な例を出すと、少し前に流行った「たまごっち」というゲームがある。「たまごっち」は行動を上手く選択することで、画面の中のキャラクターを育てていく育成ゲームであるが、これは単純にゲームであると同時に、ペットを飼うという人間行動をゲーム上の仮想空間でシミュレーションしているとも考えられる。もちろん「たまごっち」はペットの飼い方のシミュレーションのために開発された商品ではないから、「たまごっち」をやり込んだからといって現実のペットの飼い方がうまくなるというものではない。このように市場に出回っているゲームには、なんらかの人間活動のシミュレーションになっているものが数多く存在している。そういったゲームのほとんどは、現実の人間活動をうまく表現していることよりも、ゲームが面白いか否かに重点が置かれているであろう。しかし、実際の人間活動をかなり正確にシミュレーションしているゲームもある。例えば、「モノポリー」というボードゲームは模擬紙幣を使ったり、他のプレイヤーと交渉したりと、人間の経済活動の一部を表現したゲームである。  1章では、ゲームの面白さについてはひとまず措き、現実世界の人間の活動をうまくシミュレーションできるようなゲームを構成する。(現実世界のある事象を、ゲーム上の事象で模倣して対応させることを、「表現する」と呼ぶことにする。)ゲームの構成にあたっては、エコロジー的な原理・法則と矛盾しないことをまず念頭において人間の社会活動を表現しようと試みている。まずは、このゲームの説明書を読んでもらいたい。説明書を読む時は何やら難しいことをやっていると身構える必要は無い。そこらのおもちゃ屋で買ってきたゲームの説明書を読んでいるような気分で読んでもらえば結構である。その時、ゲーム上の事象と現実世界の事象が、どのように対応しているかを一つ一つ確認しながら読んで頂けると、著者の意図が読み取りやすいと思われる。ミクロゲームの「ミクロ」という言葉の意味は後述する。

 1-1-1 ミクロゲームの基本的性格

 ・ミクロゲームの目的
 ミクロゲームは基本的に4人で行い、この4人をそれぞれミクロプレイヤーと呼ぶことにする。(ミクロゲームのプレイヤーをミクロプレイヤー、マクロゲームのプレイヤーをマクロプレイヤーと呼ぶが、混同する恐れの無い場合は単にプレイヤーと略すことにする。)この他にゲームの進行の補助をするディーラーが1人いる。 4人のプレイヤーはそれぞれ、牌(麻雀牌のようなものを思い浮かべてほしい)、カード(トランプのカードのようなものを思い浮かべて欲しい)、チップを持ってテーブルを四方から囲んでプレーする。  また、各プレイヤーは前方のテーブル上に裏向きに伏せられた牌の山(山牌)をそれぞれ持っており、そこから牌を手に取ってくることができる。ただし、自分の山から取ることしか許されず、他プレイヤーの山から取ることはできない。ディーラーはカードを持っており、条件が満たされればプレイヤーはディーラーからカードをもらうことができる。  プレイヤーの目的は、以下の①②を両立させることである。

①「飢餓終了」と呼ばれる、ゲームオーバー状態に陥らないこと(飢餓終了については後述)。

②次のA、Bのうちから一つを選択。
A:少ないターンの間に、自分がもつ得点をできるだけ大きくすること(ターンについては後述)。
B:自分の需要を満たす(需要が満たされた状態については後述)

 自分でゲームの目的を選択するなんて変なゲームだと思われるかもしれないが、現実世界の人間にも大きく分けて2種類の人間がいて、限りなくお金を稼ぐことを目的にする人間とある程度のお金で満足してしまう人間がいる。これはどちらが優れた人間であるかは一概には言えない。おおよそ前者はAで表現され、後者はBで表現されている。Aを選択したプレイヤーを「拡大志向プレイヤー」、Bを選択したプレイヤーを「定常志向プレイヤー」と呼ぶことにする。

 得点は各プレイヤーが手持ち牌を組み合わせて作る「役」を「消費する」ことにより得られる。「役」や「役の消費」については詳しく後述するが、ポーカーの役や、麻雀の役のようなものを思い浮かべて欲しい。プレイヤーは得点を得るために、様々な行動の中から最適と思われる行動を選択する。  あくまでこのゲームの目的は飢餓終了にならない状態を保ちながらAもしくはBのうちの選んだ方の目的を達成することであり、他のプレイヤーと得点を競い合うゲームではない。ゲームに終わりはなく、ゲームの終わりで一番得点の多いプレイヤーを表彰することもない。(しかしそうは言ってもついつい他のプレイヤーと得点を競い合ってしまいがちだが。)

《牌の種類と役割》
 牌は物質を表現している。もしくは、原子を表現している。プレイヤーは麻雀のように、牌を組み合わせて得点の高い役を作ろうとする。  牌は緑牌と黒牌の2種類がある。
・緑牌
 緑牌は主に有機物を表現している。また、緑牌は主に自然の力により自然界を循環する物質を表現している。緑牌にはC牌、H牌、N牌などがある。これらは主に炭素、水素、窒素などを念頭においているのだが、あくまで炭素、水素、窒素などを表現したものではない。実世界には窒素原子を含んだ無機物もたくさん存在するので、実世界の有機物の特性を緑牌で表現している。緑牌かつ黒牌という牌は存在しない。緑牌のみを組み合わせて作った役のことを「緑役」と呼ぶことにする。  緑役にはたくさんの種類があるが、ここでは「ブレッド」というゲーム上非常に重要な役を一つ紹介するにとどめる。「ブレッド」という役はC牌2個で構成されており、非常にシンプルな役である。「ブレッド」は、人間の食料を表現している。プレイヤーは常に「ブレッド」を手元に保持しておかないとゲームオーバーとなってしまう。これは餓死を表現している。  プレイヤーは、緑牌で作った役は場に捨てることが可能である。ディーラーは各プレイヤーが場に捨てた緑牌の一部をある程度シャッフルして、何ターンか後に再び各プレイヤーの山牌に戻して補充してくれる。これは自然の力による物質の循環を表現している。

・黒牌
 黒牌は主に無機物を表現している。また、黒牌は主に自然の力により自然界を循環しない物質を表現している。黒牌にはFe牌、Cu牌、Au牌などがある。緑牌は場に捨てることができるのに対して、一旦手に入れた黒牌は場に捨てることができず、ずっとそのまま保持しているか、交換行動にて他のプレイヤーに渡すかのどちらかとなる。(交換行動については後述。)黒牌のみを組み合わせて作った役のことを「黒役」と呼ぶことにする。
 また、緑牌と黒牌の両方を組み合わせて作る役も存在し、その役のことを「混色役」と呼ぶことにする。
《カードの種類と役割》
 プレイヤーは基本的にディーラーからもらうことでカードを増やすことができる。カードを組み合わせて役を作ることはできないので、カードにより直接得点を得ることはできない。カードはゲーム展開を有利にしてくれる補助的な役目をする。このカードを場に捨てることは可能であるが、自分が有利になるカードなので特に自分から捨てる必要は無い。カードは人間の頭や本に蓄積された知識、方法などの人的資本を表現している。
《チップの種類と役割》
 詳しくは後述するが、チップは自分が他のプレイヤーと牌や役の交換をする際に役に立つものである。チップは貨幣を表現している。

 1-1-2 ゲームの進行と行動

 まず各プレイヤーはカードと牌とチップをいくらか配られた状態からスタートする。4人でジャンケンをし、一人の勝者を決め、そのプレイヤーから時計回りの順番に行動を行う(行動については後述)。各プレイヤーそれぞれが行動を選択して実行し、一巡することを1ターンと呼ぶことにする。各プレイヤーは行動を取る際には、必ず初めに何個かの「ブレッド」を場に捨ててから行動を選択するのだが、手持ちの「ブレッド」個数によって捨てる個数が異なる。
・プレイヤーの手持ち「ブレッド」が5個以上のとき
 プレイヤーは「ブレッド」を5個場に捨てることと引き換えに、様々な行動を取ることが可能となる。これは人間がおよそ一定カロリーの食事をして仕事をすることを表現している。たとえ行動をとりたくない時でも必ず「ブレッド」を5個捨てなくてはならない。これは仕事をしなくても、食べない訳にはいかないことを表現している。
・プレイヤーの手持ち「ブレッド」が5個未満のとき
 行動は取れず、得点は0となり、ゲーム終了である。これを「飢餓終了」と呼ぶことにする。これは餓死を表現している。
 各プレイヤーが取ることのできる行動は大きく分類すると7種類あり、以下順番に説明していく。いずれの行動も、「ブレッド」と引き換えに行わねばならい。

行動1:緑牌採掘行動
 山牌から何個かの緑牌を引いてくる。もしくは、山牌から緑牌で構成されている役を引いてくる。(山牌の中にはバラバラの緑牌だけではなく、もう既に役として完成されたひとまとまりの緑牌も入っている。詳しくは後述。)プレイヤーは山牌の中にどんな牌が入っているか、今までの経験から予想することはできても、完全には知ることができない。つまり、プレイヤーは山牌の中にどんな牌があるか見ることはできないし、ディーラーにどんな牌を入れたか聞くことも許されない。  緑牌採掘行動は、自然界から有機物を収穫することなどを表現している。具体的にはコメを収穫すること、魚を取ること、石油を採掘することなどを表現している。

行動2:黒牌採掘行動
 山牌から何個かの黒牌を引いてくる。緑牌と同様、山牌からどんな黒牌が出てくるかプレイヤーは完全には知ることはできない。黒牌採掘行動を取った結果、緑牌が手に入るということはない。つまり、プレイヤーの目の前には緑牌の山牌と黒牌の山牌がきちんと分けて並べられているということである。  黒牌採掘行動は、金属を採掘することなどを表現している。

行動3:交換行動
 他プレイヤー3人のうち1人とカード、牌、チップ、役の交換を行う。お互いが欲しがっている牌同士を交換しても良いし、牌とチップを交換しても良い。何と何を交換するかは交換するプレイヤー同士で話し合って決めるのだが、基本的には互いの合意があれば交換が成立する。特別な結託が無ければ自分以外の3人のうち最終的に一番良い条件を提示したプレイヤーとと交換するだろう。3人のいずれとも納得のいく交換条件が見出せなかった時は交換行動失敗ということで、そのプレイヤーの1ターン分の行動が終了する。ただし交換行動のために最初に場に捨てた「ブレッド」は返って来ず、無駄になる。交換行動は人間同士が交換を行うことなどを表現している。  交換行動の際に場に捨てる「ブレッド」の数は、何を交換するのかに依って決まる。これは輸送コストや取引費用、交渉費用を表現している。  また、一回の交換行動について他プレイヤーとの「交渉時間」は一分間と決まっており、この時間はプレイヤー同士の会話が認められる。この時間が過ぎると他プレイヤーとの会話は一切してはならない。つまりこの「交渉時間」の間のみ誰がどんな牌や役をもっており、なにを欲しているかの情報のやり取りが可能となる。「交渉時間」は人間同士の情報のやり取りに必要な時間を表現している。

行動4:生産行動
 手持ちの牌を組み合わせて役を作る。もしくは、牌と役、役と役を組み合わせて新たな役を作る。生産行動の際に場に捨てる「ブレッド」の数は、どの役を生産するのか等に依って決まる。生産行動は人間が物質をうまく組み合わせて新たな財を生み出すことなどを表現している。

行動5:消費行動
 完成した役を得点に変える。生産行動などによって完成した役は手に持っているだけでは得点にならず、この消費行動を行って初めて得点となる。役は消費された後どうなるのかは、役を構成する牌の種類によって異なる。緑役は、消費された後、場に捨てる。黒役は、消費された後、「使用済み黒役」として手元に残る。混色役は、消費された後、緑牌の部分は場に捨て、黒牌の部分は「使用済み黒役」として手元に残る。「使用済み黒役」というのは定義上、必ず黒牌のみで構成されている。消費行動の際に必要な「ブレッド」個数は、どの役を消費するのかに依って決まる。消費行動は、食べ物を食べること、テレビを見ること、音楽を聴くことなどを表現している。

行動6:分解行動
「使用済み黒役」を解除する。解除された「使用済み黒役」は普通の黒牌にもどり、役を構成していた黒牌は手元に残る。その黒牌は黒牌採掘行動により得られた黒牌となんら変わりは無い。牌は生産行動により、役として一つにまとまり、分解行動によりバラバラに戻る。「使用済み黒役」はそのままでは生産行動の際の材料として使えないのだが、分解行動によって再利用可能となる。分解行動の際に必要な「ブレッド」個数は、どの役を分解するのかに依って決まる。分解行動は、家庭でのごみの分別、リサイクル業、下水処理などを表現している。

行動7:研究・教育行動
 ディーラーからカードをもらう。ただし、いつでももらえるとは限らない。その意味では運次第なのだが、後述するようにカードをたくさんもらえる確率を上げることが可能である。  研究・教育行動は企業や大学の研究行動や教育行動などを表現している。

 上記1~7いずれも、その行動を取るに当たって必要な「ブレッド」の個数が決まっている。詳しくは後述するが、例えば行動1は「ブレッド」が2個必要であり、行動2は「ブレッド」が3個必要である。プレイヤーは行動を取る際に必要な「ブレッド」の数の合計が、最初に捨てた「ブレッド」の数以下に収まるように行動を選択する。例えばプレイヤーが「ブレッド」を5個以上持っている時、「ブレッド」を5個捨てることと引き換えに、行動1を1回、行動2を1回取ることができる。行動に必要な個数は2×1+ 3×1 = 5である。また、行動1を2回、というように同じ行動を複数回取ることも可能である。また、行動1のみを2回選択した場合行動に必要な個数は4となり、最低限場に出さねばならない5個の「ブレッド」のうち1個が余ることになるが、その余った「ブレッド」も場に捨てなくてはならない。

 1-1-3 外界の機能と循環不良

 山牌と消費された役を捨てる場とディーラーを合わせて、自然界を表現している。その意味で、山牌と役を捨てる場とディーラーを合わせて「外界」と呼ぶことにする。外界は色々な機能を持っている。  外界の1つ目の機能は、緑牌を組み合わせて役を生産してくれる機能である。ディーラーはそれぞれのプレイヤーの山牌にあるタイミングで緑牌や緑役を補充してくれる。つまり、役はプレイヤーが生産する以外に、外界が生産してくれる役が存在する。ただしディーラーが補充している様子はプレイヤーから見える場合もあるし、見えない場合もある。  これを「外界の生産機能」と呼ぶことにする。これは、自然の恵みが我々にもたらしてくれる食料、毛皮などを表現している。ただし、外界の生産機能によって役が作られるのは、緑牌のみに限る。黒牌に対しては外界は何もしない。先述の「ブレッド」という役は外界が生産してくれる緑役である。  ゲーム開始時、山の中には既に外界の生産機能によって生産された役が蓄えられているのだが、これらの役は2種類に分類できる。

①ゲーム開始以降は外界が生産しない役
 これは、ゲーム開始時には一定量が山の中に含まれているのだが、ゲーム開始以降は、山の中の量が増えることが無い役のことである。つまり、これは一旦山から取り出して消費したらそれでおしまいの一度限りの役である。この種の役を「再生不可能緑役」と呼ぶことにする。再生不可能緑役の中には、「オイル」「石炭」などの役がある。これらは、化石燃料などの再生不可能な資源を表現している。

②ゲーム開始以降も外界が生産し続ける役
 これは、ゲーム開始時に一定量が山の中に含まれているのだが、仮に緑牌採掘行動にてそれらを全て取ってきたとしても、外界の生産機能によって再びディーラーが山に補充してくれる役のことである。この種の役を「再生可能緑役」と呼ぶことにする。先述の「ブレッド」は再生可能緑役に属する。他にも「木材」や「毛皮」などの再生可能緑役が存在する。これらは、木材や毛皮などの再生可能な資源を表現している。

 外界の二つ目の機能は、緑牌を含む役をプレイヤーが消費した後、場に捨てた時、外界はプレイヤーの代わりに緑牌からなる役を分解してくれる機能である。ディーラーはプレイヤーが組み上げた役をばらばらに崩して牌に戻してくれる。これを「外界の分解機能」と呼ぶことにする。これは、有機物を菌類・細菌類などが分解してくれることを表現している。  ただし、外界の分解機能には上限があり、あるプレイヤー、もしくは複数のプレイヤーが場に捨てた緑牌、緑役の合計がこの上限を超えると、4人のプレイヤー全員に被害が出る。また、 黒牌を含む役をプレイヤーが消費した後、使用済み黒役がプレイヤーの手元に残るのだが、ある種の使用済み黒役を手元に残しておくと、4人のプレイヤー全員に被害が出る。ただし使用済み黒役をプレイヤーが分解した場合は被害は出ない。  被害と言うのは具体的に、外界の生産機能によって生産される山牌の中の役が減ってしまうことを指す。つまりプレイヤーが緑牌、緑役を捨てすぎたり、ある種の使用済み黒役をいつまでも手元に保持していたりすると、ディーラーは怒ってしまって、山牌にあまり補充してくれなくなる。この被害のことを「循環不良」と呼ぶことにする。つまり、循環不良は外界の生産機能を低下させる。  どの緑牌、緑役をどれだけ捨てればどれだけの循環不良が起こるのか、またどの種の使用済み黒役をどれだけ手元に保持していればどれだけの循環不良が起こるのか、についてはマスクデータとして決まっており、ディーラーだけは詳細まで把握している。しかしゲームスタート時プレイヤーは知らない状態からスタートする。これは例えば、赤潮などの環境問題を表現している。現実世界においては、循環不良が外界の生産機能の増大を招くケースも見られるが、ここでは考えないことにする。  外界の生産機能、外界の分解機能は「確率的な変動」を受ける。つまり、ディーラーが緑役をくずして緑牌にし、山牌に緑牌や緑役を補充してくれる量はターンによって変動する。

 1-1-4 役と得点表


 プレイヤーは生産行動、交換行動、緑牌採掘行動により得点の大きな役を手に入れて、その役を消費し、得点を得ることが目的である。例えば、「イス」という役はC牌×2、H牌×2で構成されているのだが、材料となるC牌×2、H牌×2を手元に集めただけでは役は完成しない。材料となる牌を手元に集めた上で「ブレッド」×5を必要とする「イス」の生産行動をとって初めて役が完成する。この時、C牌×2、H牌×2、「ブレッド」×5を「イス」の材料と呼ぶことにする(「ブレッド」×5も材料に含めることに注意)。  一旦役が生産されると、その役はあたかも一個の牌と同じように振る舞い、他プレイヤーに渡す際にはその役を構成する牌はひとまとまりとして渡すことしかできない。そして「イス」という役を消費して初めてプレイヤーは得点を得る。「イス」は緑牌を材料として生産された役なので、消費されると、場に捨てられ、外界により分解される。分解されることで、生産された役は解除され、再びバラバラの牌として振る舞う。もちろん生産行動、消費行動は行動を取る際には最初に何個かの「ブレッド」を必要とする。  これらは、以下の経済活動を表現している。木材等の有機物からイスを作る際には、材料として木材を手に入れるだけでなく、それらの材料を使って人間が仕事をして初めてイスが完成する。そしてそのイスに座ることで人間はイスの価値を享受する。イスを野ざらしで放置しておいたら、いずれ木材部分は腐り自然へと還っていくだろう。  現代の現実世界においては、木材などの有機物と、鉄などの無機物を組み合わせてイスが作られているであろうが、ここではイスは有機物のみからできていると仮定して考えている。  役はプレイヤーが得られる効果により3種に分類できる。
①得点源としての役
 消費すると得点が得られる役。これは消費して嬉しい財を表現している。先述した「イス」という役は得点源としての役である。
②材料としての役
 生産行動をとるときの材料となる役
③物的資本としての役
 この役そのものを消費しても得点は入らないが、この役を保持していることで今後のゲーム展開が有利になる役。(以下この役を単に、「物的資本」と呼ぶことにする。)例えばFe牌×3、C牌×2、「ブレッド」×5を材料として「クワ」という混色役が完成する。この「クワ」という役を保持していると、緑牌採掘行動(行動1)を取る時に必要な「ブレッド」の個数が少なくて済む。世の中にはクワを所有すること自体に喜びを感じる人もいるかもしれないが、ほとんどの人はクワを使うことで作業効率が上がることにクワの価値を見出していることを表現している。
 物的資本としての役は、プレーヤーが保持することで、前述した8種の「行動」を有利にする様々な効果を発揮する。効果によって以下のように分類出来る。

物的資本1-1
 緑牌採掘行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らすことができる。1ターンの間に場に捨てる「ブレッド」の数は10個以下と決まっているので、このカードによって1ターン中に取れる行動が多くなる。前述の「クワ」が物的資本1-1にあたる。  これはクワを持っていると畑仕事などの効率が上がり、その分余裕ができた時間を他の仕事に当てることができる、という状況を表現している。

物的資本1-2
 ディーラーが山に補充する緑牌の量、または緑役の量を増やすことができる。つまり、外界の生産機能を大きくすることができる。前述した様にプレイヤーが場に捨てた緑牌は、ある程度シャッフルしてディーラーが山に戻す。この時戻す量を増やすことは、プレイヤーが一定期間に取ってくることができる緑牌の上限を増やすことになる。これは例えば、肥料によって一定期間の間に収穫可能な農作物の量を増やすことなどを表現している。

物的資本1-3
 外界の分解機能を大きくすることができる。これは例えば、ごみ処理施設などを表現している。

物的資本2
 黒牌採掘行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らすことができる。これは例えば、鉱山から鉄鉱石を掘り出す時に使う採掘機などを表現しており、採掘機を持っていると今まで3時間かかっていた仕事が1時間で済む状態などを表現している。もしくは今まで3人でやっていた仕事を1人でできるようになる状態などを表現している。

物的資本3-1
 前述の通り、交換行動の際に場に捨てる「ブレッド」の数は何を交換するのかに依って決まるが、その「ブレッド」の数を減らすことができる。これは例えば、財を輸送する際のトラックを表現しており、トラックを持っていると今まで3時間かかっていた仕事が1時間で済む状態などを表現している。

物的資本3-2
 他プレイヤーとの「交渉時間」を延長することができる。これは例えば、電話があれば情報のやり取りが早くなることなどを表現している。

物的資本4
 生産行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らすことができる。例えば、「イス」という役を生産したい時、普通に生産行動を取ると、「ブレッド」×5が必要なのだが、もしも物的資本4の一種である「ノコギリ」という役を保持していれば「イス」を生産するのに必要な「ブレッド」は4個で済む。これはイスを作る際に道具を持たずに作ろうとすると大変だが、ノコギリを持っていると楽に作ることができるという状況などを表現している。

物的資本5
 消費行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らすことができる。これは例えば、ナイフとフォークを持っていると食事がしやすい状況などを表現している。

物的資本6
 分解行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らすことができる。これは例えば、ドライバーを持っているとネジを使った製品の分解が早くなるといった状況などを表現している。

物的資本7
 研究・教育行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らす、またはディーラーからカードをたくさんもらえる確率を上げる効果を発揮する。これは例えば、学校や研究施設があると人的資本の形成に役立つという状況などを表現している。

  役は生産されてから一定期間が過ぎるとその効果を失う。この期間を「賞味期限」と呼ぶことにする。
 賞味期限が過ぎた場合、緑役は自動的に場に捨てられ、黒役は自動的に「使用済み黒役」となり、効果を失う。  混色役は少し複雑なルールで効果を失う。例えば前述の「クワ」という混色役であれば、10ターンという期間が決まっており、「クワ」の生産から10ターンが経過すると、役を構成するFe牌×3、Cu牌×1、C牌×2のうち、緑牌であるC牌×2は自動的に場に捨てられ、黒牌であるFe牌×3、Cu牌×1は「使用済み黒役」として手元に残る。これは、クワも何年か経つとさび付いたり、刃が欠けたりして使い物にならなくなる状況などを表現している。更に、クワの構成材料である金属の部分は人間が分解しない限りずっとそのまま人間の手元に残り、クワの構成材料である木の部分は微生物等が分解してくれる、という状況を表現している。チップに賞味期限は無い。
 各プレイヤーはゲームの戦略上、得点源としての役は賞味期限が来る前に消費しないと役の効果が無くなり得点も得られないし、更にその役を生産する際のターンも無駄になるので、役を生産したら早めに消費するか、もしくは交換しようとするだろう。材料としての役、物的資本としての役も同様に、存分に使うかもしくは交換しようとするだろう。
   このゲームでは、現実世界において人間が様々な欲望を満たそうとする行為を、プレイヤーに得点が入る状況で表現している。  原則としてプレイヤーは役を消費することで得点できるが、同じ役の消費によって得られる点数はプレイヤー毎で同一とは限らない。これは、現実世界において、その人間の立場や状況により、同じ物品や現象に対して感じる価値が異なることを表現している。たとえば農業に従事する者にとって「クワ」は大変価値のあるものだが、商業に従事する者にとってはそれほどでもなく、逆に、商業に従事する者にとっては価値のある「そろばん」が、農業に従事する者にとってはそれほどでもない、といったことである。各プレイヤーの役と得点の関係は、ゲーム開始前に配られる「得点表」に定められている。  なおこの「得点表」の値も、状況や時間と共に変化する。例えば「イス」を消費する時、プレイヤーXには通常Y点が入るが、同時に3つ消費する場合、得点は単純に3Y点とはならず、ある割合で減少する。これは、同じものが一杯あったら一般に価値が下がる(限界効用逓減の法則)ことを表現している。更に「イス」を大量に消費した場合、その後しばらくの間、「 イス 」消費による得点は0になる。
 これは現実世界において、イス が大量に存在し、人間の欲望を喚起しなくなってしまった状態を表現している。ゲームでは、この状態を「『イス』に対する需要が満たされている状態」と呼ぶ。また、このような状態が積み重なり、得点表に記載されているすべての役の得点が0になってしまった状態を、単に「需要が満たされている状態」、と呼ぶことにする。 もちろん、「イス」に対する需要が満たされている状態でもまた数ターンが経過すれば、「イス」に対する得点は0でなくなる。これは、再びイス への需要が生まれた状態を表現している。  また、例えば「衣服」という役を5ターン前に消費した時は15点入ったのだが、今全く同じ状態で「衣服」を消費しているのに10点しか入らない、ということもある。これは流行などを表現している。
 全ての役には賞味期限が設けられているのだが、チップには賞味期限が無い。プレイヤーが価値を見出すものには、役、チップ、牌、カードなどプレイヤーが手元に置くことができるものと、山牌、他プレイヤーとの信頼関係などプレイヤーが手元に置くことができないものがある。プレイヤーが手元に置くことができるものの中で、役だけは賞味期限が存在する。つまり、プレイヤーの得点源には全て賞味期限が存在している。  もしある役に賞味期限がなければ、プレイヤーはその役に対する需要が満たされている状態であっても、何ターンか後に再び需要が喚起された時のためにその役を無限に手に入れようとするだろう。つまり長期的な需要まで考えると、その役に対する需要が無限大となり、需要が満たされることは不可能となってしまう。その結果、定常志向プレイヤーは目的を達成することはできなくなってしまう。ゲームにおいて役には全て賞味期限が存在するので上記のようなことは起こらないのであるが、チップ、牌、カードには賞味期限が存在しないので、一見需要が無限大となってしまうように思える。しかし得点表に得点が記載されているのは「得点源としての役」のみであり、チップ、牌、カードに対する得点は存在しない。その意味において、「需要が満たされている状態」となることは可能であり、定常志向プレイヤーはゲームの目的を達成することが可能である。  そこで需要を「短期的需要」と「長期的需要」に分けて考えることにする。定常志向プレイヤーがゲームの目的としていることは、得点表に記載がある「得点源としての役」に対する「短期的需要」を満たすことであって、得点表に記載の無いカードなどに対する「長期的需要」を満たすことではない。俗な言い方となるが、「短期的需要」が満たされた状態は、現実世界において「さしあたり直近で欲しい物は今無いな。」という状態を表現している。  拡大志向プレイヤーは、短期的需要が満たされた場合、とりあえず長期的な戦略として物的資本としての役、材料としての役、チップ、牌、カードを獲得しようとするだろう。  チップへの需要には短期的需要としての側面と長期的需要としての側面の2つが存在している。短期的需要とは、手元のチップをすぐに得点源としての役と交換して近い将来得点に結びつくものである。このチップの機能は交換の媒介手段としての貨幣機能を表現している。長期的需要とは、チップが遠い将来得点に結びつく予定のものであり、現実世界における貯金や将来の不安に対する備えを表現している。また、このチップの機能は価値の貯蔵手段としての貨幣機能を表現している。  
 緑牌、黒牌、混色牌はゲームのルール上、牌の動きが異なるので、以下に一般的な牌の動きをまとめておく。牌の動き方は異なっていても、緑牌、黒牌共に消えたりせず、麻雀牌のようにテーブル上を行ったり来たりしているだけである。これは、「物質は原子とよばれる究極的な粒子からできており、原子は破壊もできず、新しくつくることもできず、他の原子に変えることもできない」というドルトンの原子説を表現したものである。(核反応が起こると他の原子へと変えることも可能だが、ここでは表現しない。)
①緑役の生産から分解まで
 プレイヤーは緑牌を複数組み合わせて緑役を生産するか、外界の生産機能により、既に役となっている緑役を山から引いてくる。得点源としての緑役の場合、消費されるか賞味期限を過ぎた後、場に捨てられ、外界によって分解される。材料としての緑役の場合、他の役の生産材料に使われる前に賞味期限を迎えてしまうと、場に捨てられ、外界によって分解される。物的資本としての緑役の場合、賞味期限を過ぎた後、場に捨てられ、外界によって分解される。そして、ディーラーが再び山にもどし、プレイヤーが引いてくるまで山の中に眠り続ける。このように、緑牌はぐるぐるとまわる。これらは主に、有機物などの循環を表現している。
②黒役の生産から分解まで
 プレイヤーは黒牌を複数組み合わせて黒役を生産する。得点源としての黒役の場合、消費されるか賞味期限を過ぎた後、「使用済み黒役」として手元に残る。材料としての黒役の場合、他の役の生産材料に使われる前に賞味期限を迎えてしまうと、「使用済み黒役」として手元に残る。物的資本としての黒役の場合、賞味期限を過ぎた後、「使用済み黒役」として手元に残る。プレイヤーは「使用済み黒役」をずっとそのまま手元で放置しておいてもよいが、その黒役を構成している黒牌は、生産に使うことができない。「使用済み黒役」を分解したら、役を構成している黒牌はバラバラになり、再び生産の材料とすることができる。山から引いてきた黒牌と、分解して得られる黒牌はなんら変わりが無い。基本的に黒牌は、山から引いてきたら、再び外界に戻ることは無い。これらは主に、無機物などの非循環を表現している。
③混色役の生産から分解まで
 プレイヤーは緑牌と黒牌を組み合わせて混色役を生産。混色役を構成する緑牌は上記①の流れ、黒牌は上記②の流れでテーブルの上を移動する。

 1-1-5 役の生産とエネルギー

 プレイヤーが生産行動にて役を作る際には、以下のルールに従わなくてはならない。まず、役を構成する牌の数から1を引いた数をその役の「結合数」と呼ぶことにする。例えば「ブレッド」はC牌×2で構成されているので「ブレッド」の結合数は1である。 「ブレッド」は牌を横に並べると牌と牌の間は1箇所であり、牌同士の連結数が結合数である。「イス」という役はC牌×2、H牌×2で構成されており、牌を並べると間は3箇所となるので「イス」の結合数は3である。   前述のように、「イス」の生産時には通常、材料としてC牌×2、H牌×2、「ブレッド」×5が必要となる。材料として準備されたこれらのものは、C牌、H牌はまだ連結されていない単独の牌であるので、材料の結合数の総和は「ブレッド」の1×5 = 5のみである。そして、材料から生産された「イス」の結合数は3であり、5>3である。このように、役を生産する際には必ず、
 「(材料の結合数の総和)>(生産された役の結合数)」
を満たさなくてはならない、というルールがある。前述のように物的資本「ノコギリ」を持っていれば、「イス」の生産に必要な「ブレッド」4個で済むのだが、この場合もやはり4>3を満たしている。つまり、「イス」の生産のために必要な材料は、少なくとも結合数が3以上でなくてはならない。このルールはどんな物的資本、どんなカードを手に入れようとも変わらない。  役の結合数の数は主に、その物質に蓄えられているギブスの自由エネルギー(いわゆる使用可能なエネルギー)を表現している。(生産するために使った役の結合数)>(生産された役の結合数)というのは閉じた系、等温等圧条件下でのギブスの自由エネルギー減少法則(熱力学の第2法則、エントロピー増大則)を表現している。  ここで特殊な役を紹介しておく。「自然エネルギー発電所」、「電池」という2つの物的資本としての役があるのだが、この物的資本を使うと外界の生産機能に頼らずに結合数を増やすことが可能となる。あるプレイヤーが「自然エネルギー発電所」を生産すると、プレイヤーはその役を自分の山の横に置かなければならない。更に、プレイヤーが「電池」を10個生産し、「自然エネルギー発電所」の横において置くと、一定ターン経った後に「電池」10個が連結する。つまり、結合数が9増える。この増えた結合数は、プレイヤーが他の役を生産するために必要な結合数として使ってよいこのことは、「自然エネルギー発電所」を山の横に置いて表現しているように、プレイヤーが操作できるものではなく、外界の機能である。つまり、「自然エネルギー発電所」を生産するのはプレイヤーだが、「電池」を連結する(電池を充電すると呼ぶことにする)のはあくまで外界、と考える。外界のこの機能を「外界の充電機能」と呼ぶことにする。(外界の充電機能は外界の生産機能の一部であると捉えても良いだろうが、ここでは区別して定義しておく。) 「自然エネルギー発電所」は太陽光パネルや、風力発電所、水力発電所などを表現したものであり、「電池」は電池などを表現したものである。。上記の例にて結合数が9増えるのにかかるターン数は、プレイヤーによって異なる。このように各プレイヤーごとに外界の充電機能の大きさが異なることは、例えば風力発電所を建設しても風が強い場所と弱い場所では発電量が異なることを表現している。  ゲーム上プレイヤーは手元で、様々な役を生産することができるが、手元の合計結合数を増やすことができる手段は以下の3つに限られる。①外界の生産機能により生産された緑役を山から採掘してくる。②交換行動にて他プレイヤーから結合された役をもらう。③外界の充電機能により電池を充電する。  ちなみに再生不可能緑役の一種である「オイル」は11個の緑牌が連結した役であり、結合数は10である。このように「オイル」は非常に大きな結合数をもつので、ゲームの戦略上非常に重要な役である。

 1-1-6 カード

 このゲームにおいて「カード」を手に入れることは、現実世界での様々な「イノベーション」を表現している。プレイヤーはカードを持つことでゲームを有利に進めることができる。  カードは他のプレイヤーと交換でき、その際相手には現物ではなく「コピー」を渡すことができる。これは、現実世界において、イノベーションによる新たな技術や知見が、「移動」ではなく「伝播」するものであることを表現している。  カードには賞味期限がないので、一旦保持したら、その後永久にその効果を得られる。
 カードは、物的資本と同様に7種の行動全てに効果を発揮し、効果によって分類できる。
カード1-1
 物的資本1-1と同様に、緑牌採掘行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らせる。これは例えば、マツタケはこういう場所に良く生えている、という知識を持っていると闇雲に探すよりも早く見つかる、という状況などを表現している。

カード1-2
 物的資本1-2と同様にディーラーが山に緑牌を補充する量を増やすことができる。つまり、外界の生産機能を大きくすることができる。これは例えば、この時期に種をまいてこの時期に収穫すると一番収穫量が増えるという知識などを表現している。

カード1-3
 外界の分解機能を大きくすることができる。これは例えば、この場所にごみを捨てれば分解が早いという知識などを表現している。

カード2
 黒牌採掘行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らせる。これは例えば、鉱山から鉄鉱石を掘り出す時に、こう掘るのが効率が良いという知識などを表現している。

カード3-1
 前述の通り、交換行動の際に場に捨てる「ブレッド」の数は何を交換するのかに依って決まるが、その「ブレッド」の数を減らすことができる。これは例えば、輸送する時にこの道を行くよりもあの道を通った方が早い、という知識などを表現している。

カード3-2
 他プレイヤーとの「交渉時間」を延長することができる。これは例えば、インターネット技術に関する知識などを表現している。

カード4-1
 生産行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らせる。これは例えば、イスを作る時にこの順番に組み立てれば早く生産できる、という知識を表現している。

カード4-2
 これまでに生産可能だった役の材料(「ブレッド」は除く)を減らせる。例えばFe牌×3、Cu牌×1、C牌×2で「クワ」という役が生産可能であったのが、カード4-2を引くことにより、Fe牌×2、Cu牌×1、C牌×2で「クワ」を生産できるようになる。ただし、「クワ」そのものによる効果は変化しない。つまり、多くの原料から生産された「クワ」も、少ない原料から生産された「クワ」も、物的資本1-1として緑牌採掘行動時に必要な「ブレッド」の枚数を減らす効果は同じである。これは例えば、今まである商品を過剰な材料で作っていたのが、実は少ない材料で同じ機能を実現できることに気付くことを表現している。

カード4-3
 新しい役が生産可能となる。この種のカードを「創造カード」とも呼ぶことにする。例えばゲームスタート時は「車」という役は生産不可能なのだが、研究・教育行動(行動7)を取った結果「車」と書かれた創造カードをディーラーからもらった場合、次のターンから「車」という役を生産可能になる。これは例えば、今まで自動車、という発想を持っていなかった人間が自動車を発明することなどを表現している。新しい役を創造すると、少ない材料で高得点が得られる役を生産できるようになったりするので、ゲーム上プレイヤーの展開が非常に有利となる。ゲームスタート時に各プレイヤーは既に創造カードを何枚か持っており、そのカードに書かれた役はゲームスタート時から生産可能である。プレイヤーが持っている創造カードの枚数と、生産可能な役の種類の数は一致する。

カード5
 消費行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らせる。これは例えば、娯楽の楽しみ方、気分転換の仕方を良く知っている、ということなどを表現している。

カード6
 分解行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らせる。これは例えば、この機械はこの順番で分解していくとすぐに分解できる、という知識などを表現している。

カード7
 研究・教育行動をとる際に必要な「ブレッド」の数を減らす、もしくはディーラーからもらえるカードの枚数を多くする効果を発揮する。これは例えば、教育方法などを表現している。

 1-1-7 「笛」と資源の枯渇

 ここで山牌の状態を詳しく説明する。緑牌、緑役、黒牌はプレイヤーから一部が見える状態で、分かれて山牌に積まれている。例えば、プレイヤーが「ブレッド」(再生可能緑役の一種)を採掘したい時、山牌の中に「ブレッド」が積まれているのが見えれば、そこから採掘してこれば良い。山牌の中に「ブレッド」が見当たらないときは、いくら緑牌採掘行動を取っても「ブレッド」が手に入ることは無い。このように山牌は一部が見えているのだが、残りの山牌にはカバーがかけられておりその下の山牌をプレイヤーが見ることはできないし、採掘することもできない。プレイヤーが山牌の採掘を進めるにつれてディーラーは少しずつ、カバーを外していき、中身を明らかにしていく。  前述のようにルール上、黒牌や再生不可能緑役はディーラーが山牌に追加することはしないので、山牌からそれらををどんどん採掘していくと、いずれ無くなり、採掘不能となる。プレイヤーは戦略上、それらが枯渇するタイミングを予想したいのであるが、カバーの下にどれだけの山牌が眠っているのか予測することができないため、枯渇のタイミングは予測不能である。  そして、ゲームスタートしてからいくらかターンが経過した時、いきなりディーラーが「笛」を吹く。その笛は黒牌や再生不可能緑役が残りわずかであることを知らせる笛であり、その時プレイヤーは初めて、山牌の中に残る黒牌や再生不可能緑役が残り少ないことを知ることになる。これは資源がいつかは枯渇すること、資源が枯渇する時期を正確に予測することは難しいという事実を表現している。もちろん科学が進歩すれば、正確に資源の埋蔵量を予想できるであろうが、その情報の多い少ないは、笛を吹くタイミングと吹いた時の山牌に残った量で表現することが可能である。この笛がゲームの戦略上重要な意味を持ってくるが、それについては後述する。笛が鳴った後もディーラーは緑牌、再生可能緑役については補充し続ける。

 1-1-8 戦争

 プレイヤーは、規定の個数の「ブレッド」を場に捨て、他のプレイヤーを指名することで、「戦争」を開始することができる。
 戦争の勝敗は、プレイヤーが保有する「武器」という役の数で決まる。
・「武器」の数が10倍以上離れている時
 →「武器」が少ないプレイヤーの手持ちカードと牌は全て、「武器」が多いプレイヤーに奪われる。「武器」が少ないプレイヤーはそこでゲーム終了となる。
・「武器」の数が10倍以上離れていない時
 →何も起こらず、行動は終了する。
 言うまでもなくこれは現実世界の戦争を表現している。「武器」は「戦争」に使うためだけの特別な役であり、得点源にならない。結合数が大きいため、生産には大きなコストを必要とする。

 1-1-9 契約

 プレイヤーは他プレイヤーと話し合い、独自のルールを追加することが許されている。話し合いの時間は、基本的に交換行動の「交渉時間」の中で行われる。話し合いの結果、ゲームに追加されたルールのことを「契約」と呼ぶことにする。契約は実生活の法律、規制、そして約束などを表現したものである。4人全員の間で結ばれる契約もあるし、4人のうちの何人かで結ばれる契約もある。  契約は追加ルールであるが、実際にはプレイヤー同士の約束に過ぎないため、契約を破棄することもあり得る。その場合、契約が守られないリスク管理などによってゲームはますます複雑になり、プレイヤーの戦略も変化していく。ゲームの複雑化を避けるため、さしあたっては契約を破ることはできないことにしてゲームを考えていくことにしよう。

 1-1-10 倫理目的・法律

 ゲームを始める前に、プレイヤーは全員でそのテーブルにおける「望ましい状況」を話し合い、合意を形成する必要がある。この合意を「倫理目的」と呼ぶ。 「倫理目的」は、現実世界における様々な社会の原理や倫理を表現している。ここで、倫理とは「共同生活における人間の正しいあり方」のことである。より具体的に、「倫理目的」は宗教、自然法、道徳、憲法のようなものと言ってもいいだろう。  たとえば、「飢餓終了が生じない状況」を「倫理目的」とした場合、そのテーブルでは互助の上にゲームが成立するだろう。逆に「各自が自由に目的を追求することのできる状況」を「倫理目的」にした場合は、飢餓終了に陥りそうなプレイヤーが現れても他のプレイヤーはなんら援助を行わず、またそのことを責められることもないという、自己責任の上にゲームが成立するかもしれない。 「倫理目的」を設定する時点では、プレイヤーはまだ自分に与えられるゲーム内の諸条件を知らない。すなわち、自分と他者の山牌の状態、牌、チップ、カードの初期保有量についての知識がない「ロールズの原初状態」にある。従って、そこで形成される合意の内容はリスク選好的にも、回避的にもなりうるだろう。このことは特に規制されないが、一点だけ、1-1-1で述べたゲーム本来の目的に反する内容であってはならない。つまり、あくまでプレイヤー個人はゲームの目的を達成するために倫理目的に合意する。
 プレイヤーは、「倫理目的」を達成するための具体的な方策を話し合い、プレイヤー同士で契約を結ぶことができる。これを「法律」と呼ぶ。このことは、憲法に沿って実定法を定める状況などを表現している。  例えば「飢餓終了が生じない状況」を倫理目的にしたテーブルでは、危機に陥ったプレイヤーをどこまで助けるのか、あるいはどのプレイヤーが何を援助するのか、といった「法律」が必要になるだろう。一方、「各自が自由に目的を追求することのできる状況」を倫理目的にしたテーブルでは、最低限のリスク回避を保障する「法律」が設けられるか、あるいはそれすら制定されないかもしれない。倫理目的に応じて、「法律」の方向性や数は様々になり、同じ倫理目的であっても、制定された「法律」によって、テーブルの状態やプレイヤーの行動は大きく変化することになる。
 なお、「倫理目的」と「法律」の変更の可否や方法についても、ゲーム前にプレイヤーが話し合いで決め、「法律」として制定できる。
 以上がミクロゲームのルールである。      

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